はじめに
当サイトにお越しいただきありがとうございます。
本記事では原価計算基準を徹底解説します。わかりやすい説明と図表で各基準をひとつずつ丁寧にみていきます。また各項目のあとには公認会計士試験短答式試験で実際に出題された原価計算基準の問題もつけているので力試ししましょう!
本記事の想定読者は次の通りです。
- 会計士受験生で管理会計論を勉強されている方々
- 経理や経営企画で原価計算実務に触れている方々
全体像を俯瞰する

原価計算基準は6つの章から構成されています。
- 原価計算基準の設定について
- 原価計算の目的と原価計算の一般的基準
- 実際原価の計算
- 標準原価の計算
- 原価差異の算定および分析
- 原価差異の会計処理
それではひとつずつ丁寧に見ていきましょう。
Contents
- 1 はじめに
- 2 全体像を俯瞰する
- 3 原価計算基準の設定について
- 4 第1章 原価計算の目的と原価計算の一般的基準
- 5 第2章 実際原価の計算
- 5.1 製造原価要素の分類基準
- 5.2 原価の費目別計算
- 5.3 原価の部門別計算
- 5.4 原価の製品別計算
- 5.4.0.1 基準本文
- 5.4.0.2 基準の解説
- 5.4.0.3 基準本文
- 5.4.0.4 基準の解説
- 5.4.0.5 基準本文
- 5.4.0.6 基準の解説
- 5.4.0.7 基準本文
- 5.4.0.8 基準の解説
- 5.4.0.9 一問一等
- 5.4.0.10 基準本文
- 5.4.0.11 基準の解説
- 5.4.0.12 基準本文
- 5.4.0.13 基準の解説
- 5.4.0.14 基準本文
- 5.4.0.15 基準の解説
- 5.4.0.16 一問一答
- 5.4.0.17 基準本文
- 5.4.0.18 基準の解説
- 5.4.0.19 基準本文
- 5.4.0.20 基準の解説
- 5.4.0.21 基準本文
- 5.4.0.22 基準の解説
- 5.4.0.23 一問一答
- 5.4.0.24 基準の解説
- 5.4.0.25 一問一答
- 5.4.0.26 基準本文
- 5.4.0.27 基準の解説
- 5.4.0.28 基準本文
- 5.4.0.29 基準の解説
- 5.4.0.30 一問一答
- 5.4.0.31 基準本文
- 5.4.0.32 基準の解説
- 5.4.0.33 基準本文
- 5.4.0.34 基準の解説
- 5.4.0.35 一問一答
- 5.4.0.36 基準本文
- 5.4.0.37 基準の解説
- 5.4.0.38 基準本文
- 5.4.1 販管費および一般管理費の計算
- 6 第3章 標準原価の算定
- 7 第4章 原価差異の算定・分析と会計処理
- 8 ご協力をお願いいたします
- 9 最後に
原価計算基準の設定について
「原価計算基準の設定について」では、基準の設定目的や背景などが記載されています。まずはこの「基準の設定」に関する部分の文章をざっと読んでみましょう。ひとまず内容がよくわからなくとも目を通してみてください。
基準本文
わが国における原価計算制度は、従来、財務諸表を作成するに当たって真実の原価を正確に算定表示するとともに、価格計算に対して資料を提供することを主たる任務として成立し、発展してきた。 しかしながら、近時、経営管理のため、とくに業務計画および原価管理に役立つための原価計算への要請は、著しく強まってきており、今日、原価計算に対して与えられる目的は、単一ではない。すなわち、企業の原価計算制度は、真実の原価を確定して財務諸表の作成に役立つとともに、原価を分析し、これを経営管理者に提供し、もって業務計画および原価管理に役立つことが必要とされている。したがって、原価計算制度は、各企業がそれに対して期待する役立ちの程度において重点の相違はあるが、いずれの計算目的にもともに役立つように形成され、一定の計算秩序として常時継続的に行われるものであることを要する。ここに原価計算に対して提起される諸目的を調整し、原価計算を制度化するため、実践規範としての原価計算基準が、設定される必要がある。 原価計算基準は、かかる実践規範として、わが国現在の企業における原価計算の慣行のうちから、一般に公正妥当と認められるところを要約して設定されたものである。しかしながら、この基準は、個々の企業の原価計算手続を画一に規定するものではなく、個々の企業が有効な原価計算手続を規定し実践するための基本的なわくを明らかにしたものである。したがって、企業が、その原価計算手続を規定するに当たっては、この基準が弾力性をもつものであることの理解のもとに、この基準にのっとり、業種、経営規模その他当該企業の個々の条件に応じて、実情に即するように適用されるべきものである。 この基準は、企業会計原則の一環を成し、そのうちとくに原価に関して規定したものである。それゆえ、すべての企業によって尊重されるべきであるとともに、たな卸資産の評価、原価差額の処理など企業の原価計算に関係ある事項について、法令の制定、改廃等が行われる場合にも、この基準が充分にしん酌されることが要望される。
昭和三十七年十一月八日 企業会計審議会
基準の解説
この「基準の設定」の部分には、5つのポイントがあります。①基準の発行年、②当時の原価計算、③原価計算への新たな要請、④「実践規範」としての側面、⑤「基本的なわく」としての側面、この5つです。

それでは一つずつ確認していきましょう。
基準の発行年
まずは「基準の設定」の文章の最後の箇所に注目してください。
昭和三十七年十一月八日 企業会計審議会
この原価計算基準は昭和37年(西暦1963年)に公表されました。
ところで、1963年というと、戦後およそ20年後、現在からはおよそ60年前ということになります。また高度経済成長は1955年~1973年とされています。
つまり、この原価計算基準は、日本企業が急速な成長を進めるなかでつくられたものなのです。
以下の「基準の設定」の文章は、この昭和37年当時の時代背景を念頭に読み進めましょう。
当時の原価計算
次に昭和37年当時の原価計算がどのような状態だったのかが書かれています。
「基準の設定」によれば、昭和37年当時までの原価計算は次の二つの目的を持って各企業の中で行われていました。
- 財務諸表を作成するため
- 価格計算をするため
それぞれ見ていきましょう。
まず財務諸表作成目的。昭和37年以前は、原価計算基準はなかったとはいえ、ここの企業が売上原価・製造原価といった原価をそれぞれ計算し決算資料を作成していました。
次に価格計算目的。
この部分には若干の注意が必要です。一般に価格計算というと、何か自社が販売している商品・製品の販売価格を計算することのように考えてしまいがちです。
しかし、ここでいう価格計算とは軍事目的の製品販売を指します。つまり、ある企業が軍事用品を製造した際に、それをいくらで政府・国家に納品するかを決めるためのものです。時代背景を反映していますね。一般的な製品の価格を計算することではないということを覚えておいてください。
原価計算への新たな要請
昭和37年より以前の原価計算では、財務諸表作成と価格計算が主な目的でした。しかし高度経済成長期には生産性を高めるために、より効率的な経営管理を行う必要性が生じてきます。

「実践規範」としての側面
このような歴史を持つ原価計算制度にはいくつかの側面があります。一つは「実践規範」としての側面です。これはどういった意味なのでしょうか。
この実践規範としての側面には、より細かくは三つの性質があります。
- いずれの計算目的にもともに役立つ
- 一定の計算秩序として常時継続的に行なわれる
- 原価計算の慣行のうちから、一般に公正妥当と認められるところを要約して設定された
大事な箇所なので、一つずつ見ていきましょう。
まず一つ目、「いずれの計算目的にもともに役立つ」こととは、先ほどご説明した、財務諸表の作成、価格計算、経営管理といった異なる目的を、ひとつの原価計算で達成しようということです。どれか一つだけでなく、それぞれに役立つようにしましょうというお話です。この考え方はこの後述べる具体的な原価計算の方法にも大きな影響を与えているので、頭の隅に残しておいてください。
次に二つ目、「一定の計算秩序として常時継続的に行なわれる」こととは、途中でコロコロ変えたりしないで、一度計算方法を決めたら何か変更がない限り同じ計算をしましょうねというお話です。これは財務諸表を作成する際の基本的な考え方です。
そして三つ目、「原価計算の慣行のうちから、一般に公正妥当と認められるところを要約して設定された」ことは、原価計算基準がすでに企業が行っている原価計算のいいところを整理・要約して作られたものだよということです。決して理想論・あるべき論だけからつくられたものではなく、すでにある実践のなかから設定されました。
「基本的なわく」としての側面
さて、このような3つの性質をもつ原価計算ですが、実践規範という側面の他にもう一つ、「基本的なわく」としての側面があります。これは個々の企業の原価計算を正確にルールに落とし込むのではなく、あくまで大枠としての方針だけを示しているという意味です。
これはなぜでしょうか。先ほどご説明した性質から考えてみましょう。
まず三つ目の性質、基準の設定方法から考えてみましょう。各企業の原価計算実践を整理・要約して原価計算基準はつくられました。そこで基準を作る際には、企業の業種や規模等といった個別の性質は無視して、より一般的なことのみをまとめて作られています。
また一つ目の複数の目的に役立つためには、そのような基準が個々の企業の状況に併せてケースバイケースで使われる必要があります。財務諸表作成が主要な目的の会社もあれば、経営管理に大きく役立たせたい企業もあったでしょう。
こういった背景もあり、原価計算制度はより弾力性(個々の企業によって選択の幅があること)を持っています。

このような時代の背景があって原価計算というものは設定されたということがわかりましたね。それでは次に実際に原価計算の目的と一般的基準という箇所を読み進めていきましょう。
第1章 原価計算の目的と原価計算の一般的基準

「原価計算の目的と一般的基準」の章は、①原価計算の目的、②原価計算制度、③原価の本質、④原価の諸概念、⑤原価計算の一般的基準の5つの項目から成り立っています。原価計算制度のエッセンスを抽出して書かれている箇所であり、理解のためにとても大切です。気合を入れていきましょう。
原価計算の目的
まずは原価計算の目的からです。「基準の設定」の箇所と同様にざっと目を通してみましょう。
原価計算には、各種の異なる目的が与えられるが、主たる目的は、次のとおりである。
- 企業の出資者、債権者、経営者のために、過去の一定期間における損益ならびに期末における財政状態を財務諸表に表示するために必要な真実の原価を集計すること。
- 価格計算に必要な原価資料を提供すること。
- 経営管理者の各階層に対して、原価管理に必要な原価資料を提供すること。ここに原価管理とは、原価の標準を設定してこれを指示し、原価の実際の発生額を計算記録し、これを標準と比較して、その際の原因を分析し、これに関する資料を経営管理者に報告し、原価能率を増進する措置を講ずることをいう。
- 予算の編成ならびに予算統制のために必要な原価資料を提供すること。ここに予算とは、予算期間における企業の各業務分野の具体的な計画を貨幣的に表示し、これを総合編成したものをいい、予算期間における企業の利益目標を指示し、各業務分野の諸活動を調整し、企業全般にわたる総合的管理の要具となるものである。予算は、業務執行に関する総合的な期間計画であるが、予算編成の過程は、たとえば製品組合せの決定、部品を自製するか外注するかの決定等個々の選択的事項に関する意思決定を含むことは、いうまでもない。
- 経営の基本計画を設定するに当たり、これに必要な原価情報を提供すること。ここに基本計画とは、経済の動態的変化に適応して、経営の給付目的たる製品、経営立地、生産設備等経営構造に関する基本的事項について、経営意思を決定し、経営構造を合理的に組成することをいい、随時的に行われる決定である。
基準本文
基準の解説
「基準の設定」の文章では、原価計算の目的は財務諸表の作成・価格計算・経営管理の3つでした。ここでは経営管理をより細かく3つに細分化して、すべてで次の5つの目的としています。
- 財務諸表作成目的
- 価格計算
- 原価管理
- 予算管理
- 経営の基本計画
財務諸表作成目的と価格計算は先ほどご説明しました。ここでは残りの原価管理、予算管理、経営の基本計画について詳しく見ていきましょう。
原価管理
原価計算基準が規定する原価管理は、標準原価計算に基づく原価管理です。では、標準原価計算とはどのようなプロセスを持っているものなのでしょうか。ここではその大枠を理解していきましょう。

標準原価計算の全体像は上の画像の通りです。まず経営上の予測に基づいて、標準原価が設定されます。ここでは標準原価というものは各部署に伝えられる”ノルマ”のようなものだと考えてください。そして、実際に製造や加工といった活動が終わった後に実際原価を測定します。
ここで先ほどの努力目標である標準原価とありのままの実態を表す実際原価に差異が起きていることがあります。これが重要でこの差異の原因は何だったのかを分析し、その原因に対して是正措置をとることで原価を低減していくのです。
またここまで差異分析・原因分析まででえられた知見は、次回の予測や標準原価の設定にフィードバックされます。
この一連の流れが標準原価計算に基づく原価管理と呼ばれるものです。
予算管理
予算管理はイメージがしやすいかと思います。予算をつくり、それを各部署に指示してその予算の達成に向けて努力させ、結果を確認し、是正措置をとる一連の活動ですね。
原価計算が提供する情報は予算管理にも役立つように作成されます。
経営の基本計画
経営の基本計画と言われると「?」となるかもしれません。これに関しては現在ではしばしば「戦略」と呼ばれる経営活動がこれにあたると考えて差し支えないでしょう。
例えば企業の戦略として新しい店舗を作るべきか否か検討していたとします。そこで必要な情報はどのようなものでしょうか?
その地域に出店した際の予想売上データは必要でしょう。しかしそれだけでなく店舗の予想利益を考えるには、その店舗の開設にかかる投資や毎期どれだけのコストがかかるのかなど費用面の計算も不可欠です。
このように原価情報は戦略にも影響を及ぼします。
なお、原価計算基準の主要テーマはあくまでそのような目的に役立つ原価をどのように計算するかです。戦略そのものが主要テーマではないことから、以下本記事では戦略に関する議論は割愛します。
原価計算制度
基準本文
この基準において原価計算とは、制度としての原価計算をいう。原価計算制度は財務諸表の作成、原価管理、予算統制等の異なる目的が、重点の相違はあるが相ともに達成されるべき一定の計算秩序である。かかるものとして原価計算制度は、財務会計のらち外において随時断片的に行なわれる原価の統計的、技術的計算ないし調査ではなくて、財務会計機構と有機的に結びつき常時継続的に行なわれる計算体系である。原価計算制度は、この意味で原価会計にほかならない。 原価計算制度において計算される原価の種類およびこれと財務会計機構との結びつきは、単一ではないが、しかし原価計算制度を大別して実際原価計算制度と標準原価計算制度とに分類することができる。 実際原価計算制度は、製品の実際原価を計算し、これを財務会計の主要帳簿に組み入れ、製品原価の計算と財務会計とが、実際原価をもって有機的に結合する原価計算制度である。原価管理上必要ある場合には、実際原価制度においても必要な原価の標準を勘定組織のわく外において設定し、これと実際との差異を分析し、報告することがある。 標準原価計算制度は、製品の標準原価を計算し、これを財務会計の主要帳簿に組み入れ、製品原価の計算と財務会計とが、標準原価をもって有機的に結合する原価計算制度である。標準原価計算制度は、必要な計算段階において実際原価を計算し、これと標準との差異を分析し、報告する計算体系である。 企業が、この基準にのっとって、原価計算を実施するに当たっては、上述の意味における実際原価計算制度又は標準原価計算制度のいずれかを、当該企業が原価計算を行なう目的の重点、その他企業の個々の条件に応じて適用するものとする。 広い意味での原価の計算には、原価計算制度以外に、経営の基本的計画および予算編成における選択的事項の決定に必要な原価たとえば差額原価、機会原価、付加原価等を、随時に統計的、技術的に調査測定することも含まれる。しかしかかる特殊原価調査は、制度としての原価計算の範囲外に属するものとして、この基準に含めない。
基準の解説
ここの条文では、原価計算の種類を説明したうえで、どれが制度としての原価計算として基準で扱われるのかを明確にしています。詳しく見ていきましょう。

まず原価計算制度に含まれる原価計算には次の二つがあります。
- 実際原価計算
- 標準原価計算
財務会計上、記帳に実際原価を持ちいる場合には実際原価計算、標準原価を用いる場合には標準原価計算です。なお、実際原価と標準原価がどういったものかについては後ほど詳しくみていきます。ここでは、実際原価は実際に使った素材等に費やされた原価、標準原価は素材等が無駄なく理想的な状態で製品が作られたときの原価、とだけ知っておいてください。それぞれの意味も後ほど解説します。
ここで重要なのは特殊原価調査です。特殊原価調査には例えば次のようなものが該当します。
- 差額原価
- 機会原価
- 付加原価
それぞれの説明はこの記事では割愛します(詳細は管理会計の領域になります)。ここでは、実際原価計算と標準原価計算が制度としての原価計算であること、制度としての原価計算以外にも原価計算には様々な種類があること、この2つだけを覚えておいてください。
また基準の記載方法として、原価計算基準では、基準に含まれない除外項目を明確に定義することで、逆に含まれるものの理解が促進できる形になっています。今回も制度としての原価計算は実際原価計算と標準原価計算であるとだけ記述すれば本来は足りるはずです。しかし実践規範として、また基本的なわくを示すという側面からも、実際の企業担当者が誤解することを防ぐために、あえて制度外の原価計算を「これは原価計算制度には含まれないよ!」と記述してくれているのです。
次は原価の本質です。「そもそも原価って何さ?」という箇所になります。
原価の本質
基準本文
原価計算制度において、原価とは、経営における一定の給付にかかわらせて、は握された財貨又は用役(以下これを「財貨」という。)の消費を、貨幣価値的に表わしたものである。
- 原価は、経済価値の消費である。経営の活動は、一定の財貨を生産し販売することを目的とし、一定の財貨を作り出すために、必要な財貨すなわち経済価値を消費する過程である。原価とは、かかる経営過程における価値の消費を意味する。
- 原価は、経営において作り出された一定の給付に転嫁される価値であり、その給付にかかわらせて、は握されたものである。ここに給付とは、経営が作り出す財貨をいい、それは経営の最終給付のみでなく、中間的給付をも意味する。
- 原価は、経営目的に関連したものである。経営の目的は、一定の財貨を生産し販売することにあり、経営過程は、このための価値の消費と生成の過程である。原価は、かかる財貨の生産、販売に関して消費された経済価値であり、経営目的に関連しない価値の消費を含まない。財務活動は、財貨の生成および消費の過程たる経営過程以外の、資本の調達、返還、利益処分等の活動であり、したがってこれに関する費用たるいわゆる財務費用は、原則として原価を構成しない。
- 原価は、正常的なものである。原価は、正常な状態のもとにおける経営活動を前提として、は握された価値の消費であり、異常な状態を原因とする価値の減少を含まない。
基準の解説
「原価の本質」を考える上では、企業はどのようにして経営活動を行っているかを考えるのが役に立ちます。下の図表を見ながら進めていきます。まず企業は、原料や従業員といった経営のインプットを受け取ります。それを企業の中でうまく組み合わせて、アウトプットとして製品を市場に投入します。世の中には様々な企業がありますが、経営活動の基本形は全てこの形です。

それでは先ほど紹介した企業の経営活動をもとに、原価の本質について考えていきましょう。
まず、原価は経営過程における価値の消費である。これは原価は経営活動をするために受け取ったインプットですよ、ということを言っています。インプットには原料だけでなく、従業員に支払われるお給料や工場に係る設備費用など様々なものが含まれます。
つぎに、原価は給付に転嫁される価値であるということ。簡単に言うと給付というものを作り出すために使ったお金が原価ですよ、ということを言っています。
では「給付」とは何でしょうか。基準によると、「経営の最終給付のみでなく、中間的給付をも意味する」とされています。これは最終的な製品だけでなく、製品になる前の作りかけの製品も含まれますよ、ということを言っています。
さらに、原価は経営目的に関連したものである。このことは、先ほど示した経営活動の基本形を見てみればわかります。経営活動の基本形は、インプットを受け取って、企業内で組み合わせて、アウトプットとして市場に投入することでしたね。この一連の経営活動に利用されるものは経営目的です。
逆に言うと、これ以外の活動はたとえ企業で行われていても経営目的ではないと基準では決めています。基準では具体的に財務活動(お金の貸し借り)を挙げて、経営目的ではないことを明示しています。
そして、原価は正常なものである。ここで正常とは経営活動が普通に行われていることを想定しています。逆に自然災害などの異常事態のときの普通でない費用は原価には含まれません。
原価の諸概念
「原価の本質」の項目では、「そもそも原価って何?」という話を見てきました。次は「じゃあその原価というものには、どんなものがあるの?」というお話です。ここでは以下の3つの分類を導入しています。
- 実際原価 対 標準原価
- 製品原価 対 期間原価
- 全部原価 対 部分原価
それでは一つずつ見ていきましょう。
実際原価と標準原価
基準本文
原価計算制度においては、原価の本質的規定にしたがい、さらに各種の目的に規定されて、具体的には次のような諸種の原価概念が生ずる。
(一) 実際原価と標準原価
- 実際原価とは、財貨の実際消費量をもって計算した原価をいう。ただし、その実際消費量は、経営の正常な状態を前提とするものであり、したがって、異常な状態を原因とする異常な消費量は、実際原価の計算においてもこれを実際消費量と解さないものとする。 実際原価は、厳密には実際の取得価格をもって計算した原価の実際発生額であるが、原価を予定価格等をもって計算しても、消費量を実際によって計算する限り、それは実際原価の計算である。ここに予定価格とは、将来の一定期間における実際の取得価格を予想することによって定めた価格をいう。
- 標準原価とは、財貨の消費量を科学的、統計的調査に基づいて能率の尺度となるように予定し、かつ、予定価格又は正常価格をもって計算した原価をいう。この場合、能率の尺度としての標準とは、その標準が適用される期間において達成されるべき原価の目標を意味する。 標準原価計算制度において用いられる標準原価は、現実的標準原価又は正常原価である。
現実的標準原価とは、良好な能率のもとにおいて、その達成が期待されうる標準原価をいい、通常生ずると認められる程度の減損、仕損、遊休時間等の余裕率を含む原価であり、かつ、比較的短期における予定操業度および予定価格を前提として決定され、これら諸条件の変化に伴い、しばしば改訂される標準原価である。現実的標準原価は、原価管理に最も適するのみでなく、たな卸資産価額の算定および予算の編成のためにも用いられる。
正常原価とは、経営における異常な状態を排除し、経営活動に関する比較的長期にわたる過去の実際数値を統計的に平準化し、これに将来にすう勢を加味した正常能率、正常操業度および正常価格に基づいて決定される原価をいう。正常原価は、経済状態の安定している場合に、たな卸資産価額の算定のために最も適するのみでなく、原価管理のための標準としても用いられる。
標準原価として、実務上予定原価が意味される場合がある。予定原価とは、将来における財貨の予定消費量と予定価格とをもって計算した原価をいう。予定原価は、予算の編成に適するのみでなく、原価管理およびたな卸資産価額の算定のためにも用いられる。
原価管理のために時として理想標準原価が用いられることがあるが、かかる標準原価は、この基準にいう制度としての標準原価ではない。理想標準原価とは、技術的に達成可能な最大操業度のもとにおいて、最高能率を表わす最低の原価をいい、財貨の消費における減損、仕損、遊休時間等に対する余裕率を許容しない理想的水準における標準原価である。
基準の解説
まずは実際原価と標準原価の分類です。これは「原価計算制度」の項目でも出てきましたね。

まず実際原価から説明します。実際原価とは実際消費量に基づいて計算された原価を指します。このとき価格面(単価)は実際価格でも予定価格でもかまいません。
次に大事な標準原価です。標準原価は標準消費量に基づいて計算された原価を指します。ここで、標準消費量というのは、「経営がうまくいっていればだいたいこれくらいの量ですむよね」というノルマとしての消費量だと考えてください。
このノルマとしての標準原価には、そのノルマの厳しさに応じて、いくつかの種類があります。最も高いものが理想的標準原価です。しかしこれはあくまで利用される程度で原価計算制度上は認められていません。
次に高能率なのが現実的標準原価です。名前の通り、現実的に達成されうるノルマといったイメージですね。
また正常原価や予定原価も用いられることがあります。
各標準原価の定義については、原価計算基準本文を読んで簡単に把握しておきましょう。
基準本文
製品原価と期間原価
原価は、財務諸表上収益との対応関係に基づいて、製品原価と期間原価とに区別される。 製品原価とは、一定単位の製品に集計された原価をいい、期間原価とは、一定期間における発生額を、当期の収益に直接対応させて、は握した原価をいう。 製品原価と期間原価との範囲の区別は相対的であるが、通常、売上品およびたな卸資産の価額を構成する全部の製造原価を製品原価とし、販売費および一般管理費は、これを期間原価とする。
基準の解説
この条文では財務諸表上の収益との対応関係から、原価を製品原価と期間原価に区別しています。
製品原価は「一定単位の製品に集計された原価」であり、財務諸表上は売上原価を構成します。一方で期間原価は「一定期間における発生額を、当期の収益に直接対応させて、は握した原価」のことで、財務諸表上は販売費および一般管理費がこれに該当します。
この分類は下図の通り、損益計算書をみれば一目瞭然です。

基準本文
原価は、集計される原価の範囲によって、全部原価と部分原価とに区別される。全部原価とは、一定の給付に対して生ずる全部の製造原価又はこれに販売費および一般管理費を加えて集計したものをいい、部分原価とは、そのうち一部分のみを集計したものをいう。 部分原価は、計算目的によって各種のものを計算することができるが、最も重要な部分原価は、変動直接費および変動間接費のみを集計した直接原価(変動原価)である。
基準の解説
この項目はここでは割愛します。後ほど変動費や直接費といった分類が出てきたところでおさらいしましょう。ここでは、全部原価・部分原価という名称だけ覚えておいてください。
非原価項目
非原価項目とは、原価計算制度において、原価に算入しない項目をいい、おおむね次のような項目である。
- 経営目的に関連しない価値の減少、たとえば 1 次の資産に関する減価償却費、管理費、租税等の費用 (1) 投資資産たる不動産、有価証券、貸付金等 (2) 未稼働の固定資産 (3) 長期にわたり休止している設備 (4) その他経営目的に関連しない資産 2 寄付金等であって経営目的に関連しない支出 3 支払利息、割引料、社債発行割引料償却、社債発行費償却、株式発行費償却、設立費償却、開業費償却、支払保険料等の財務費用
- 異常な状態を原因とする価値の減少、たとえば 1 異常な仕損、減損、たな卸減耗等 2 火災、震災、風水害、盗難、争議等の偶発的事故による損失 3 予期し得ない陳腐化等によって固定資産に著しい減価を生じた場合の臨時償却費 4 延滞償金、違約金、罰課金、損害賠償金 5 偶発債務損失 6 訴訟費 7 臨時多額の退職手当 8 固定資産売却損および除却損 9 異常な貸倒損失
- 税法上とくに認められている損失算入項目、たとえば 1 価格変動準備金繰入額 2 租税特別措置法による償却額のうち通常の償却範囲額をこえる額
- その他の利益剰余金に課する項目、たとえば 1 法人税、所得税、都道府県民税、市町村民税 2 配当金 3 役員賞与金 4 任意積立金繰入額 5 建設利息償却
基準の解説
ここでは、原価に含まれない項目を非原価項目として具体的に例示しています。内容は「原価の本質」でみたものの裏返しです。基準では非原価項目として次の5分類を挙げています。
- 経営目的に関連しないもの
- 異常な状態によるもの
- 税法によるもの
- 利益剰余金に関するもの
各分類における具体的な項目は基準に書いてある通りです。原価に含まれないものとして、こんなものがあるんだなと頭の片隅に覚えておけば十分でしょう。
原価計算の一般的基準
さあいよいよ原価計算基準の本体のところに差し掛かってきました。
基準は以下の三分類をしたうえで、12個の一般的基準を紹介しています。
- 財務諸表作成目的
- 原価管理目的
- 予算管理目的
基本的にはこれまでの箇所で出てきた概念や説明を整理した文章になっていますので、それほど難しくはありません。それぞれの目的ごとに、一つずつ見ていきましょう。
基準本文
原価計算制度においては、次の一般的基準にしたがって原価を計算する。
(一) 財務諸表の作成に役立つために、
- 原価計算は原価を一定の給付にかかわらせて集計し、製品原価および期間原価を計算する。すなわち、原価計算は原則として (1) すべての製造原価要素を製品に集計し、損益計算書上の売上品の製造原価を売上高に対応させ、貸借対照表上仕掛品、半製品、製品等の製造原価をたな卸資産として計上することを可能にさせ、 (2) また、販売費および一般管理費を計算し、これを損益計算書上期間原価として当該期間の売上高に対応させる。
- 原価の数値は、財務会計の原始記録、信頼しうる統計資料等によって、その信ぴょう性が確保されるものでなければならない。このため原価計算は、原則として実際原価を計算する。この場合実際原価を計算することは、必ずしも原価を取得価格をもって計算することを意味しないで、予定価格等をもって計算することもできる。また必要ある場合には、製品原価を標準原価をもって計算し、これを財務諸表に提供することもできる。
- 原価計算において、原価を予定価格等又は標準原価をもって計算する場合には、これと原価の実際発生額との差異は、これを財務会計上適正に処理しなければならない。
- 原価計算は、財務会計機構と有機的に結合して行なわれるものとする。このために勘定組織には、原価に関する細分記録を統括する諸勘定を設ける。
基準の解説
①原価計算プロセスの説明
まずは①の文章を見ていきましょう。ここでは、原価計算の大まかなプロセスを製品原価と期間原価に分けて説明しています。特に重要なのは製造原価のプロセスである(1)です。

上述の基準六-①-(1)の文章を図にすると上図のようになります。製造原価要素がまず、製品に集計されたうえで、BS科目とPL科目に振り分けられるのですね。主に原価計算では上図でいうところのピンクの矢印、つまり製品原価要素をどのように製品に集計するかが問題になってきます。製品一個当たりの原価がわかってしまえば、あとはそれがいくつ売れたのか、いくつ残っているのかでPL科目とBS科目に振り分けるのは簡単ですね。
(2)は販売費および一般管理費は、PL上では期間原価として計上しようねというお話です。先ほど述べたとおりですね。
②用いられる原価の説明
次に原価計算で用いることのできる原価の種類を説明しています。ここで用いることができる原価の種類は以下の3つです。
- 実際原価
- 予定原価
- 標準原価
①実際原価に関しては、これから第二章でより詳細にその計算方法をみていきます。また③標準原価は第三章で取り扱います。
この条文で特に気を付けたいのは、原価計算では、原則として実際原価を計算する ということです。3つの原価を用いることを認めているのに何故でしょうか。
まず予定原価はなぜ用いられるのでしょうか。これは予定原価を用いることで、購入・使用した数量だけがわかれば、あとは価格は予定したものを使って記帳できるというメリットがあるからでした。しかし予定原価と実際原価はある程度乖離します。そこである一定の期間(決算ごと)にはその乖離を埋める必要があるのです。これは原価差異の処理と呼ばれる取扱です。次の項目を見てみましょう。
③原価差異の処理について

例えば使用した素材の数量が100kg、予定した1kg当たりの単価が850円だったとします。このときにこの原価は85,000円と予想されますね。
しかし一定期間がたって、ふたを開けてみると予想していたより安く、1kgあたり800円で購入できたとします。こうすると、本来の原価は80,000円であるにもかかわらず、帳簿にはすでに85,000円で記帳されてしまっていますね。この差額を調整するために、原価差異の処理をする必要があるのです。
原価差額の処理の詳細な説明は第四章および第五章にて行います。
④財務会計機構上の注意点
ここは基準の設定でも述べたことと同じことです。原価計算は財務会計の一環として行われるということですね。そのためには適切な勘定科目を設定しましょうというお話です。
基準本文
(二) 原価管理に役立つために、
- 原価計算は、経営における管理の権限と責任の委譲を前提とし、作業区分等に基づく部門を管理責任の区分とし、各部門における作業の原価を計算し、各管理区分における原価発生の責任を明らかにさせる。
- 原価計算は、原価要素を、機能別に、また直接費と間接費、固定費と変動費、管理可能費と管理不能費の区分に基づいて分類し、計算する。
- 原価計算は、原価の標準の設定、指示から原価の報告に至るまでのすべての計算過程を通じて、原価の物量を測定表示することに重点をおく。
- 原価の標準は、原価発生の責任を明らかにし、原価能率を判定する尺度として、これを設定する。原価の標準は、過去の実際原価をもってすることができるが、理想的には、標準原価として設定する。
- 原価計算は、原価の実績を、標準と対照比較しうるように計算記録する。
- 原価の標準と実績との差異は、これを分析し、報告する。
- 原価計算は、原価管理の必要性に応じて、重点的、経済的に、かつ、迅速にこれを行なう。
基準の解説
それぞれ簡単に見ていきましょう。
①権限と責任の明確化
まず①は組織区分のお話です。原価管理をするためにはどこでいくらの無駄が発生したのかがわかる必要があります。
次のようなケースを考えてみましょう。あなたは事業部Aのリーダーです。次のような指示があなたの上司からあったとしましょう。
さてあなたはどうするでしょうか?さらに自分の部下に単純にがんばれというのも手ではあります。でも賢いあなたはより詳細な原因を突き止めることにしました。
ここまでわかればあなたは加工班への指導に注力できるでしょう。全体に単純にがんばれというよりも効果的かつ効率的に無駄を削減できるはずです。
上記のケースは本当に簡単な例示です。しかしこれができるのはこの会社がA事業部とその下にある調達班、製造班、販売営業班のそれぞれに原価を集計し管理していたためです。
このように組織区分に応じて、責任と権限を委譲しましょうという話が基準には書いてあります。
②原価要素の分類
原価要素はそれぞれその形態や機能別に分類しましょうというお話です。
③測定表示における物量重視
原価計算では、物量が重視されます。どういうことかを次の上司と部下の掛け合いでみてみましょう。
おそらくこれだけのやり取りでは、上司の人は原材料費が高かったことはわかっても、そこからどのように改善できるかはわかりません。しかし、部下の人がすかさずこう付け足しました。
ここまで報告してもらえれば、上司としてもさらなる追加調査の指示や改善の手を考え始められそうです。
このように金額に対する物量を測定表示することを原価計算では重視するのです。
④原価能率の設定
これは標準原価を原価能率(ノルマ)として導入しましょうというお話です。詳しくは標準原価計算の箇所で見ていきましょう。
⑤実績と標準は比較できるように!
これも標準原価計算のお話です。ここでは割愛します。
⑥差異は分析する!
同じく標準原価計算のお話です。割愛します。
⑦必要性に応じて臨機応変に
ここまで説明してきたように原価計算には原価管理という目的があります。したがって、原価管理の目的に沿うように臨機応変にスピーディーに原価計算をする必要があるよねというお話です。
基準本文
予算とくに費用予算の編成ならびに予算統制に役立つために、
- 原価計算は、予算期間において期待されうる条件に基づく予定原価又は標準原価を計算し、予算とくに、費用予算の編成に資料を提供するとともに、予算と対照比較しうるように原価の実績を計算し、もって予算統制に資料を提供する。
基準の解説
この基準では原価計算は予算管理にも役立つようにしましょうということを言っています。なお原価計算基準では予算管理は基準外に位置するとしてより詳細な説明はされていません。本記事でも予算管理の詳細な説明は割愛します。
一問一答
それではここで今まで習ったことをもとに、一問一答にチャレンジしてみましょう。
問題は会計士試験の短答式試験で実際に出題された問題を、過去5年間10回分にわたって整理・分類したものです。
それではいきましょう!問題数は23問です。
第2章 実際原価の計算

基準本文
実際原価の計算においては、製造原価は、原則として、その実際発生額を、まず費目別に計算し、次いで原価部門別に計算し、最後に製品別に集計する。販売費および一般管理費は、原則として、一定期間における実際発生額を、費目別に計算する。
基準の解説
この基準では原価計算プロセスの大枠を示しています。
原価計算プロセスの大枠は次の3つです。
- 費目別計算
- 部門別計算
- 製品別計算

今後はこのプロセスのどこにいるのかを意識しながら読み進めてください。
製造原価要素の分類基準
形態別分類
この項目ではまず原価の種類分けをしています。原価の種類分けは次の4つがあります。
- 形態別分類
- 機能別分類
- 製品との関連による分類
- 操業度との関連による分類
それぞれ基準を参照しながら見ていきましょう。
基準本文
原価要素は、製造原価要素と販売費および一般管理費の要素に分類する。 製造原価要素を分類する基準は次のようである。
(一) 形態別分類
形態別分類とは、財務会計における費用の発生を基礎とする分類、すなわち原価発生の形態による分類であり、原価要素は、この分類基準によってこれを材料費、労務費および経費に属する各費目に分類する。 材料費とは、物品の消費によって生ずる原価をいい、おおむね次のように細分する。
- 素材費(又は原料費)
- 買入部品費
- 燃料費
- 工場消耗品費
- 消耗工具器具備品費
労務費とは、労務用役の消費によって生ずる原価をいい、おおむね次のように細分する。
- 賃金(基本給のほか割増賃金を含む。)
- 給料
- 雑給
- 従業員賞与手当
- 退職給付引当金繰入額
- 福利費(健康保険料負担金等)
経費とは、材料費、労務費以外の原価要素をいい、減価償却費、たな卸減耗費および福利施設負担額、賃借料、修繕料、電力料、旅費交通費等の諸支払経費に細分する。 原価要素の形態別分類は、財務会計における費用の発生を基礎とする分類であるから、原価計算は、財務会計から原価に関するこの形態別分類による基礎資料を受け取り、これに基づいて原価を計算する。この意味でこの分類は、原価に関する基礎的分類であり、原価計算と財務会計との関連上重要である。
基準の解説
ここではまず原価を形態別に分類しています。ここで形態別の分類とは、財務会計上の分類のことで、つまり勘定科目ごとの分類を意味しています。
原価計算では費用項目を、次の3つに区分して設定しています。
材料費 | モノにかかる費用 |
---|---|
労務費 | ヒトにかかる費用 |
経費 | その他の費用 |
ここではそれぞれの詳細な項目は割愛します。形態別分類は材料費・労務費・経費の三区分だということを覚えておきましょう。
機能別分類
基準本文
機能別分類とは、原価が経営上のいかなる機能のために発生したかによる分類であり、原価要素は、この分類基準によってこれを機能別に分類する。この分類基準によれば、たとえば、材料費は、主要材料費、および修繕材料費、試験研究材料費等の補助材料費、ならびに工場消耗品費等に、賃金は、作業種類別直接賃金、間接作業賃金、手待賃金等に、経費は、各部門の機能別経費に分類する。
基準の解説
機能別分類については本記事では説明を割愛します。なお、機能別分類は「必要に応じて」行われるものであるため、場合によってはそれほど重要性はありません。
製品との関連における分類
基準本文
製品との関連における分類とは、製品に対する原価発生の態様、すなわち原価の発生が一定単位の製品の生成に関して直接的に認識されるかどうかの性質上の区別による分類であり、原価要素は、この分類基準によってこれを直接費と間接費とに分類する。
直接費は、これを直接材料費、直接労務費および直接経費に分類し、さらに適当に細分する。
間接費は、これを間接材料費、間接労務費および間接経費に分類し、さらに適当に細分する。
必要ある場合には、直接労務費と製造間接費とを合わせ、又は直接材料費以外の原価要素を総括して、これを加工費として分類することができる。
基準の解説

費用が製品に直接的に認識されるものを直接費といいます。たとえば、カップラーメンを製品として作っていたとして、麺やその他具材の原材料費などは直接費となります。
一方で費用が直接的に認識されないものは間接費となります。カップラーメンを複数種類大量につくっているような工場では、当たり前ながら工場の減価償却費が発生します。しかしこの費用は製品一個ずつに直接的に認識されるわけではありませんね。そうなった場合には、適当な基準を置いてこの費用を振り分ける必要があるのです。
より詳しくは後述します。
操業度との関連における分類
基準本文
操業度との関連における分類とは、操業度の増減に対する原価発生の態様による分類であり、原価要素は、この分類基準によってこれを固定費と変動費とに分類する。ここに操業度とは、生産設備を一定とした場合におけるその利用度をいう。固定費とは、操業度の増減にかかわらず変化しない原価要素をいい、変動費とは、操業度の増減に応じて比例的に増減する原価要素をいう。 ある範囲内の操業度の変化では固定的であり、これをこえると急増し、再び固定化する原価要素たとえば監督者給料等、又は操業度が零の場合にも一定額が発生し、同時に操業度の増加に応じて比例的に増加する原価要素たとえば電力料等は、これを準固定費又は準変動費となづける。 準固定費又は準変動費は、固定費又は変動費とみなして、これをそのいずれかに帰属させるか、もしくは固定費と変動費とが合成されたものであると解し、これを固定費の部分と変動費の部分とに分類する
基準の解説

変動費と固定費には上図のような種類があります。この分類は直接原価計算やCVP分析で重要になってくるので覚えておきましょう。
基準本文
原価の管理可能性に基づく分類とは、原価の発生が一定の管理者層によって管理しうるかどうかの分類であり、原価要素は、この分類基準によってこれを管理可能費と管理不能費とに分類する。下級管理者層にとって管理不能費であるものも、上級管理者層にとっては管理可能費となることがある。
基準の解説
原価の管理可能性については、一定のマネジャーによってはそのコストを管理できなくとも、その上位のマネジャーであれば管理できることはあるということを話しています。
この管理可能性については、原価計算基準では詳細には書かれていないものの、管理会計を考える上ではとても重要な概念です。これに関してはこちらの記事もご紹介いたします。
原価の費目別計算
基準本文
原価の費目別計算とは、一定期間における原価要素を費目別に分類測定する手続をいい、財務会計における費用計算であると同時に、原価計算における第一次の計算段階である。
基準の解説

まずは実際原価計算の第一ステップ、費目別計算について学んでいきましょう。基本的に費目別計算は先ほど学んだ、原価の詳細な分類をしていくステップです。
基準本文
費目別計算においては、原価要素を、原則として、形態別分類を基礎とし、これを直接費と間接費とに大別し、さらに必要に応じ機能別分類を加味して、たとえば次のように分類する。
- 直接費
- 直接材料費
- 主要材料費(原料費)
- 買入部品費
- 直接労務費
- 直接賃金(必要ある場合には作業種類別に細分する。)
- 直接経費
- 外注加工費
- 直接材料費
- 間接費
- 間接材料費
- 補助材料費
- 工場消耗品費
- 消耗工具器具備品費
- 間接労務費
- 間接作業賃金
- 間接工賃金
- 手待賃金
- 休業賃金
- 給料
- 従業員賞与手当
- 退職給与引当金繰入額
- 福利費(健康保険料負担金等)
- 間接経費
- 福利施設負担額
- 厚生費
- 減価償却費
- 賃借料
- 保険料
- 修繕費
- 電力料
- ガス代
- 水道代
- 租税公課
- 旅費交通費
- 通信費
- 保管料
- たな卸減耗費
- 雑費
- 間接材料費
間接経費は、原則として形態別に分類するが、必要に応じ修繕費、運搬費等の複合費を設定することができる。
基準の解説

上記の図表のように原価要素は各種分類ができます。それぞれの分類における具体的な費用項目についてはざっと目を通してその内容をイメージしてみましょう。
基準本文
- 直接材料費、補助材料費等であって、出入記録を行なう材料に関する原価は、各種の材料につき原価計算期間における実際の消費量に、その消費価格を乗じて計算する。
- 材料の実際の消費量は、原則として継続記録法によって計算する。ただし、材料であって、その消費量を継続記録法によって計算することが困難なもの又はその必要のないものについては、たな卸計算法を適用することができる。
- 材料の消費価格は、原則として購入原価をもって計算する。 同種材料の購入原価が異なる場合、その消費価格の計算は、次のような方法による。
- 先入先出法
- 移動平均法
- 総平均法
- 後入先出法
- 個別法
- 材料の消費価格は、必要ある場合には、予定価格等をもって計算することができる。
- 材料の購入原価は、原則として実際の購入原価とし、次のいずれかの金額によって計算する
- 購入代価に買入手数料、引取運賃、荷役費、保険料、関税等材料買入に要した引取費用を加算した金額
- 購入代価に引取費用ならびに購入事務、検収、整理、選別、手入、保管等に要した費用(引取費用と合わせて以下これを「材料副費」という。)を加算した金額。ただし、必要ある場合には、引取費用以外の材料副費の一部を購入代価に加算しないことができる。 購入代価に加算する材料副費の一部又は全部は、これを予定配賦率によって計算することができる。予定配賦率は、一定期間の材料副費の予定総額を、その期間における材料の予定購入代価又は予定購入数量の総額をもって除して算定する。ただし、購入事務費、検収費、整理費、選別費、手入費、保管費等については、それぞれに適当な予定配賦率を設定することができる。 材料副費の一部を材料の購入原価に算入しない場合には、これを間接経費に属する項目とし又は材料費に配賦する。 購入した材料に対して値引又は割戻等を受けたときは、これを材料の購入原価から控除する。ただし、値引又は割戻等が材料消費後に判明した場合には、これを同種材料の購入原価から控除し、値引又は割戻等を受けた材料が判明しない場合には、これを当期の材料副費等から控除し、又はその他適当な方法によって処理することができる。 材料の購入原価は、必要ある場合には、予定価格等をもって計算することができる。 他工場からの振替製品の受入価格は、必要ある場合には、正常市価によることができる。
- 間接材料費であって、工場消耗品、消耗工具器具備品等、継続記録法又はたな卸計算法による出入記録を行わないものの原価は、原則として当該原価計算期間における買入額をもって計算する。
基準の解説

材料費は、その材料をどれだけ使ったか(消費量)と、その材料の単価はいくらか(消費価格)で計算されます。
消費量には、継続記録法とたな卸計算法という方法で測定することが認められています。
また消費価格の測定方法には、先入先出法、移動平均法、総平均法、個別法の4つが認められています。それぞれの説明はこの記事では割愛します。
また消費価格は必要ある場合には予定価格を用いることができます。あくまで価格面のみで消費量は予定量を用いることは認められていません。
基準本文
- 直接賃金等であって、作業時間又は作業量の測定を行なう労務費は、実際の作業時間又は作業量に賃率を乗じて計算する。賃率は、実際の個別賃率又は、職場もしくは作業区分ごとの平均賃率による。平均賃率は、必要ある場合には、予定平均賃率をもって計算することができる。 直接賃金等は、必要ある場合には、当該原価計算期間の負担に属する要支払額をもって計算することができる。
- 間接労務費であって、間接工賃金、給料、賞与手当等は、原則として当該原価計算期間の負担に属する要支払額をもって計算する。
基準の解説
労務費も材料費と同じく、「量 × 単価」で計算されます。ここでは人にかかる費用なので、「作業時間」と「賃率」という形で表現されています。
基準の本文
- 経費は、原則として当該原価計算期間の実際の発生額をもって計算する。ただし、必要ある場合には、予定価格又は予定額をもって計算することができる。
- 減価償却費、不動産賃借料等であって、数ヶ月分を一時に総括的に計算し又は支払う経費については、これを月割り計算する。
- 電力料、ガス代、水道料等であって、消費量を計量できる経費については、その実際消費量に基づいて計算する。
基準の解説
経費は基本的には期間発生額をコストとして認識します。
また予定価格や予定額を用いることもできます。
なお、ここで少し本論とはそれますが、「価格」と「(価)額」という言葉は明確に使い分けられるようになりましょう。例えば材料費でいえば、A材料を10kgでX円の材料費になったとして、1kg当たりの材料費、つまり単価が原価計算上は「価格」と呼ばれます。一方で価格に数量10kgを乗じて計算されたX円は価額とよばれます。
基準の本文
費目別計算において一定期間における原価要素の発生を測定するに当たり、予定価格等を適用する場合には、これをその適用される期間における実際価格にできる限り近似させ、価格差異をなるべく僅少にするように定める。
基準の解説
材料費・労務費・経費には予定価格を使うことができますが、テキトーな予定価格はダメで、ちゃんと実際に近くなるような予定価格を使いましょうとお話です。
一問一答
それでは費目別計算に関する一問一答にチャレンジしましょう。
原価の部門別計算
原価の部門別計算
基準本文
原価の部門別計算とは、費目別計算においては握された原価要素を、原価部門別に分類集計する手続をいい、原価計算における第二次の計算段階である。

基準本文
原価部門とは、原価の発生を機能別、責任区分別に管理するとともに、製品原価の計算を正確にするために、原価要素を分類集計する計算組織上の区分をいい、これを諸製造部門と諸補助部門とに分ける。製造および補助の諸部門は、次の基準により、かつ、経営の特質に応じて適当にこれを区分設定する。
- 製造部門 製造部門とは、直接製造作業の行なわれる部門をいい、製品の種類別、製品生成の段階、製造活動の種類別等にしたがって、これを各種の部門又は工程に分ける。たとえば機械製作工場における鋳造、鍛造、機械加工、組立等の各部門はその例である。 副産物の加工、包装品の製造等を行なういわゆる副経営は、これを製造部門とする。 製造に関する諸部門は、必要ある場合には、さらに機械設備の種類、作業区分等にしたがって、これを各小工程又は各作業単位に細分する。
- 補助部門 補助部門とは、製造部門に対して補助的関係にある部門をいい、これを補助経営部門と工場管理部門とに分け、さらに機能の種類別等にしたがって、これを各種の部門に分ける。 補助経営部門とは、その事業の目的とする製品の生産に直接関与しないで、自己の製品又は用役を製造部門に提供する諸部門をいい、たとえば動力部、修繕部、運搬部、工具製作部、検査部等がそれである。 工具製作、修繕、動力等の補助経営部門が相当の規模となった場合には、これを独立の経営単位とし、計算上製造部門として取り扱う。 工場管理部門とは、管理的機能を行なう諸部門をいい、たとえば材料部、労務部、企画部、試験研究部、工場事務部等がそれである。
基準の解説

部門には上記のような種類があります。それぞれの定義については基準本文で簡単に確認しておきましょう。
またこの基準で大切な箇所がもう一つあります。それは「各種の部門又は工程に分ける」という箇所です。これは大事な使い分けなのですが、個別原価計算においては部門とよばれるものは、総合原価計算では工程と呼ばれます。この認識は細かいようでいて実は大切です。後ほど個別原価計算や実際総合原価計算が出てきたときに確認しましょう。
基準本文
原価要素は、これを原価部門に分類集計するに当たり、当該部門において発生したことが直接的に認識されるかどうかによって、部門個別費と部門共通費とに分類する。 部門個別費は、原価部門における発生額を直接に当該部門に賦課し、部門共通費は、原価要素別に又はその性質に基づいて分類された原価要素群別にもしくは一括して、適当な配賦基準によって関係各部門に配賦する。部門共通費であって工場全般に関して発生し、適当な配賦基準の得がたいものは、これを一般費とし、補助部門費として処理することができる。
基準の解説

基準本文
- 原価要素の全部又は一部は、まずこれを各製造部門および補助部門に賦課又は配賦する。この場合、部門に集計する原価要素の範囲は、製品原価の正確な計算および原価管理の必要によってこれを定める。たとえば、個別原価計算においては、製造間接費のほか、直接労務費をも製造部門に集計することがあり、総合原価計算においては、すべての製造原価要素又は加工費を製造部門に集計することがある。 各部門に集計された原価要素は、必要ある場合には、これを変動費と固定費又は管理可能費と管理不能費とに区分する。
- 次いで補助部門費は、直接配賦法、階梯式配賦法、相互配賦法等にしたがい、適当な配賦基準によって、これを各製造部門に配賦し、製造部門費を計算する。 一部の補助部門費は、必要ある場合には、これを製造部門に配賦しないで直接に製品に配賦することができる。
- 製造部門に集計された原価要素は、必要に応じさらにこれをその部門における小工程又は作業単位に集計する。この場合、小工程又は作業単位には、その小工程等において管理可能の原価要素又は直接労務費のみを集計し、そうでないものは共通費および他部門配賦費とする。
基準の解説

まず原価要素を製造部門に集計します。この際に集計される原価要素は製造間接費が主な対象です。
集計に当たっては個別費と共通費にわけたうえで、製造部門と補助部門に集計してきます。
補助部門に集計された費用は、直接配賦法、階梯式配賦法、相互配賦法などの適当な配賦方法によって、製造部門に集計されます。
最後に製造部門から、製品に原価を配賦していきます。
ここまでが原則的な大きな流れです。
原価の製品別計算
基準本文
原価の製品別計算とは、原価要素を一定の製品単位に集計し、単位製品の製造原価を算定する手続をいい、原価計算における第三次の計算段階である。 製品別計算のためには、原価を集計する一定の製品単位すなわち原価単位を定める。原価単位は、これを個数、時間数、度量衡単位等をもって示し、業種の特質に応じて適当に定める。
基準の解説

費目別計算、部門別計算とみてきたので、実際原価計算最後のフェーズ、製品別計算を見ていきましょう!
基準本文
製品別計算は、経営における生産形態の種類別に対応して、これを次のような類型に区分する。
- 単純総合原価計算
- 等級別総合原価計算
- 組別総合原価計算
- 個別原価計算
基準の解説
製品別計算には大きく分けて4つの分類が存在します。分類はそれぞれどのように製品をつくっているかによります。それぞれの名称と内容の簡単な説明は以下のとおりです。
単純総合原価計算 | 同一工程で同種製品を大量生産 |
---|---|
等級別総合原価計算 | 同一工程で複数種類の製品を大量生産 |
組別総合原価計算 | 異種製品を組別に大量生産 |
個別原価計算 | 製品(群)をひとつずつ個別に生産 |
ここではそれぞれの内容はわからなくても構いません。チェックするポイントは以下のような製品の分類ごとに適用する原価計算が異なるということを覚えておいてください。
- 同時につくるのは同種製品だけか、異なる製品も含まれるか
- 大量生産品か、個別生産品か
なお、これから出てくる原価計算手法をその特徴に応じて分類すると、次のようになります。

基準本文
単純総合原価計算は、同種製品を反復連続的に生産する生産形態に適用する。単純総合原価計算にあっては、一原価計算期間(以下これを「一期間」という。)に発生したすべての原価要素を集計して当期製造費用を求め、これに期首仕掛品原価を加え、この合計額(以下これを「総製造費用」という。)を、完成品と期末仕掛品とに分割計算することにより、完成品総合原価を計算し、これを製品単位に均分して単位原価を計算する。
基準の解説

単純総合原価計算は、大量生産で同種製品を製造するときに用いられる原価計算手法でした。
その際に製造場所は「工程」と呼ばれます。単一工程のときには単純総合原価計算と呼ばれ、複数工程の場合には工程別総合原価計算と呼ばれます。(「工程別」については後述します。)

さた、基準では単純総合原価計算における計算方法が大まかに記載されています。単純化すると次の通りになります。
期首仕掛品 + 当期製造費用 = 完成品製造原価 + 期末仕掛品
これから総合原価計算のパートでは、この計算方法をより詳しく見ていくことになります。ちなみにこの計算フローを図示したものが上図で示されているBOX図と呼ばれるものになります。これから頻出するので簡単に見慣れておいてください。
基準本文
等級別総合原価計算は、同一工程において、同種製品を連続生産するが、その製品を形状、大きさ、品位等によって等級に区別する場合に適用する。 等級別総合原価計算にあっては、各等級製品について適当な等価係数を定め、一期間における完成品の総合原価又は一期間の製造費用を等価係数に基づき各等級製品にあん分してその製品原価を計算する。 等価係数の算定およびこれに基づく等級製品原価の計算は、次のいずれかの方法による。
- 各等級製品の重量、長さ、面積、純分度、熱量、硬度等原価の発生と関連ある製品の諸性質に基づいて等価係数を算定し、これを各等級製品の一期間における生産量に乗じた積数の比をもって、一期間の完成品の総合原価を一括的に各等級製品にあん分してその製品原価を計算し、これを製品単位に均分して単位原価を計算する。
- 一期間の製造費用を構成する各原価要素につき、又はその性質に基づいて分類された数個の原価要素群につき、各等級製品の標準材料消費量、標準作業時間等各原価要素又は原価要素群の発生と関連ある物量的数値等に基づき、それぞれの等価係数を算定し、これを各等級製品の一期間における生産量に乗じた積数の比をもって、各原価要素又は原価要素群をあん分して、各等級製品の一期間の製造費用を計算し、この製造費用と各等級製品の期首仕掛品原価とを、当期における各等級製品の完成品とその期末仕掛品とに分割することにより、当期における各等級製品の総合原価を計算し、これを製品単位に均分して単位原価を計算する。
- この場合、原価要素別又は原価要素群別に定めた等価係数を個別的に適用しないで、各原価要素又は原価要素群の重要性を加味して総括し、この総括的等価係数に基づいて、一期間の完成品の総合原価を一括的に各等級製品にあん分して、その製品原価を計算することができる。
基準の解説

等級別総合原価計算は、大量生産方式で等級別製品を生産するときにとられる手法でした。製造場所は工程と呼ばれ、複数工程が存在する場合には工程別等級別総合原価計算となります。
等級別総合原価計算では、等級ごとにどれほどの原価を負担させるかを示す「等価係数」というものが非常に大切になります。この記事ではその詳細について割愛しますが、計算方法はしっかりと押さえておきましょう。
一問一等
それでは、等級別総合原価計算の一問一答にチャレンジしましょう!
基準本文
組別総合原価計算は、異種製品を組別に連続生産する生産形態に適用する。 組別総合原価計算にあっては、一期間の製造費用を組直接費と組間接費又は原料費と加工費とに分け、個別原価計算に準じ、組直接費又は原料費は、各組の製品に賦課し、組間接費又は加工費は、適当な配賦基準により各組に配賦する。次いで一期間における組別の製造費用と期首仕掛品原価とを、当期における組別の完成品とその期末仕掛品とに分割することにより、当期における組別の完成品総合原価を計算し、これを製品単位に均分して単位原価を計算する。
基準の解説

組別総合原価計算は異種製品を組別(別の製造工程で)製造する場合に用いられる原価計算手法です。ここではその計算方法の詳細は割愛します。
基準本文
単純総合原価計算、等級別総合原価計算および組別総合原価計算は、いずれも原価集計の単位が期間生産量であることを特質とする。すなわち、いずれも継続製造指図書に基づき、一期間における生産量について総製造費用を算定し、これを期間生産量に分割負担させることによって完成品総合原価を計算する点において共通する。したがって、これらの原価計算を総合原価計算の形態と総称する。 総合原価計算における完成品総合原価と期末仕掛品原価は、次の手続により算定する。
まず、当期製造費用および期首仕掛品原価を、原則として直接材料費と加工費とに分け、期末仕掛品の完成品換算量を直接材料費と加工費とについて算定する。 期末仕掛品の完成品換算量は、直接材料費については、期末仕掛品に含まれる直接材料消費量の完成品に含まれるそれに対する比率を算定し、これを期末仕掛品現在量に乗じて計算する。加工費については、期末仕掛品の仕上り程度の完成品に対する比率を算定し、これを期末仕掛品現在量に乗じて計算する。
次いで、当期製造費用および期首仕掛品原価を、次のいずれかの方法により、完成品と期末仕掛品とに分割して、完成品総合原価と期末仕掛品原価とを計算する。
- 当期の直接材料費総額(期首仕掛品および当期製造費用中に含まれる直接材料費の合計額)および当期の加工費総額(期首仕掛品および当期製造費用中に含まれる加工費の合計額)を、それぞれ完成品数量と期末仕掛品の完成品換算量との比により完成品と期末仕掛品とにあん分して、それぞれ両者に含まれる直接材料費と加工費とを算定し、これをそれぞれ合計して完成品総合原価および期末仕掛品原価を算定する(平均法)。
- 期首仕掛品原価は、すべてこれを完成品の原価に算入し、当期製造費用を、完成品数量から期首仕掛品の完成品換算量を差し引いた数量と期末仕掛品の完成品換算量との比により、完成品と期末仕掛品とにあん分して完成品総合原価および期末仕掛品原価を算定する(先入先出法)。
- 期末仕掛品の完成品換算量のうち、期首仕掛品の完成品換算量に相当する部分については、期首仕掛品原価をそのまま適用して評価し、これを超過する期末仕掛品の完成品換算量と完成品数量との比により、当期製造費用を期末仕掛品と完成品とにあん分し、期末仕掛品に対してあん分された額と期首仕掛品原価との合計額をもって、期末仕掛品原価とし、完成品にあん分された額を完成品総合原価とする(後入先出法)。
- 前三号の方法において、加工費について期末仕掛品の完成品換算量を計算することが困難な場合には、当期の加工費総額は、すべてこれを完成品に負担させ、期末仕掛品は、直接材料費のみをもって計算することができる。
- 期末仕掛品は、必要ある場合には、予定原価又は正常原価をもって評価することができる。
- 期末仕掛品の数量が毎期ほぼ等しい場合には、総合原価の計算上これを無視し、当期製造費用をもってそのまま完成品総合原価とすることができる。
基準の解説
本記事では計算の詳細は割愛します。(2020/10/02時点)
基準本文
総合原価計算において、製造工程が二以上の連続する工程に分けられ、工程ごとにその工程製品の総合原価を計算する場合(この方法を「工程別総合原価計算」という。)には、一工程から次工程へ振り替えられた工程製品の総合原価を、前工程費又は原料費として次工程の製造費用に加算する。この場合、工程間に振り替えられる工程製品の計算は、予定原価又は正常原価によることができる。
基準の解説

さて今までの総合原価計算では、工程が一つだけのような単純なものを想定していました。
しかし実際には、組み立て工程もあれば、加工工程のある製品もあるでしょう。このように複数の工程がある場合には工程別総合原価計算が用いられます。
例によって計算の詳細については本記事では割愛します。
また基準の理解で大切なポイントは、総合原価計算で工程が複数ある場合には工程別総合原価計算が用いられ、個別原価計算で同様の場合には複数の”部門”があると考えて、部門別総合原価計算が用いられるということです。この使い分けは微妙かもしれませんが、覚えておきましょう。
一問一答
それでは工程別総合原価計算の一問一答にチャレンジしましょう!
基準本文
原料がすべて最初の工程の始点で投入され、その後の工程では、単にこれを加工するにすぎない場合には、各工程別に一期間の加工費を集計し、それに原料費を加算することにより、完成品総合原価を計算する。この方法を加工費工程別総合原価計算(加工費法)という。
基準の解説
本記事では割愛します。
基準本文
総合原価計算においては、仕損の費用は、原則として、特別に仕損費の費目を設けることをしないで、これをその期の完成品と期末仕掛品とに負担させる。 加工中に蒸発、粉散、ガス化、煙化等によって生ずる原料の減損の処理は、仕損に準ずる。
基準の解説
総合原価計算では、個別原価計算とことなり、特別に仕損費としては科目の集計をせずに、売上原価と期末仕掛品に案分することになります。
ここでは計算設例は割愛します。
基準本文
総合原価計算において、副産物が生ずる場合には、その価額を算定して、これを主産物の総合原価から控除する。副産物とは、主産物の製造過程から必然に派生する物品をいう。 副産物の価額は、次のような方法によって算定した額とする。
- 副産物で、そのまま外部に売却できるものは、見積売却価額から販売費および一般管理費又は販売費、一般管理費および通常の利益の見積額を控除した額。
- 副産物で、加工の上売却できるものは、加工製品の見積売却価額から加工費、販売費および一般管理費又は加工費、販売費、一般管理費および通常の利益の見積額を控除した額。
- 副産物で、そのまま自家消費されるものは、これによって節約されるべき物品の見積購入価額
- 副産物で、加工の上自家消費されるものは、これによって節約されるべき物品の見積購入価額から加工費の見積額を控除した額
軽微な副産物は、前項の手続によらないで、これを売却して得た収入を、原価計算外の収益とすることができる。 作業くず、仕損品等の処理および評価は、副産物に準ずる。
基準の解説

副産物の評価は「外部売却可能 VS 自家消費」と「加工不要 VS 加工必要」で4つの場合分けができます。この場合分けに応じて上記のように表価額が異なるので、簡単に抑えておきましょう。
一問一答
それでは副産物に関する一問一等にチャレンジしましょう!
連産品とは、同一工程において同一原料から生産される異種の製品であって、相互に主副を明確に区別できないものをいう。連産品の価額は、連産品の正常市価等を基準として定めた等価係数に基づき、一期間の総合原価を連産品にあん分して計算する。この場合、連産品で、加工の上売却できるものは、加工製品の見積売却価額から加工費の見積額を控除した額をもって、その正常市価とみなし、等価係数算定の基礎とする。ただし、必要ある場合には、連産品の一種又は数種の価額を副産物に準じて計算し、これを一期間の総合原価から控除した額をもって、他の連産品の価額とすることができる。
基準の解説
連産品はよく石油から複数の製品が同時に製造される場合などが設例として出てきますね。
実際の計算では等級別総合原価計算と同じく「等価係数」が重要なポイントとなってきます。
なお本記事では詳細な計算プロセスについては割愛します
一問一答
それでは連産品の一問一答にチャレンジしましょう!
基準本文
総合原価計算において、必要ある場合には、一期間における製造費用のうち、変動直接費および変動間接費のみを部門に集計して部門費を計算し、これに期首仕掛品を加えて完成品と期末仕掛品とにあん分して製品の直接原価を計算し、固定費を製品に集計しないことができる。 この場合、会計年度末においては、当該会計期間に発生した固定費額は、これを期末の仕掛品および製品と当年度の売上品とに配賦する。
基準の解説
総合原価計算においては直接原価計算を適用することができます。直接原価計算の詳細については本記事では割愛します。
基準本文
個別原価計算は、種類を異にする製品を個別的に生産する生産形態に適用する。 個別原価計算にあっては、特定製造指図書について個別的に直接費および間接費を集計し、製品原価は、これを当該指図書に含まれる製品の生産完了時に算定する。 経営の目的とする製品の生産に際してのみでなく、自家用の建物、機械、工具等の製作又は修繕、試験研究、試作、仕損品の補修、仕損による代品の製作等に際しても、これを特定指図書を発行して行なう場合は、個別原価計算の方法によってその原価を算定する。
基準の解説

個別原価計算は、個別製品(群)を個別生産方式で製造するときに用いられる原価計算手法でした。
ポイントは個別原価計算で複数の製造部門が設定される場合には部門別計算が行われるということでした。ちなみに総合原価計算で複数の製造部門が設定されているときには工程別原価計算が行われます。
一問一答
それでは、個別原価計算の一問一答にチャレンジしましょう!
基準本文
個別原価計算における直接費は、発生のつど又は定期に整理分類して、これを当該指図書に賦課する。
- 直接材料費は、当該指図書に関する実際消費量に、その消費価格を乗じて計算する。消費価格の計算は、第二節一一の(三)に定めるところによる。 自家生産材料の消費価格は、実際原価又は予定価格等をもって計算する。
- 直接労務費は、当該指図書に関する実際の作業時間又は作業量に、その賃率を乗じて計算する。賃率の計算は、第二節一二の(一)に定めるところによる。
- 直接経費は、原則として当該指図書に関する実際発生額をもって計算する。
基準の解説
本記事では割愛します(2020/10/02時点)
基準本文
- 個別原価計算における間接費は、原則として部門間接費として各指図書に配賦する。
- 間接費は、原則として予定配賦率をもって各指図書に配賦する。
- 部門間接費の予定配賦率は、一定期間における各部門の間接費予定額又は各部門の固定間接費予定額および変動間接費予定額を、それぞれ同期間における当該部門の予定配賦基準をもって除して算定する。
- 一定期間における各部門の間接費予定額又は各部門の固定間接費予定額および変動間接費予定額は、次のように計算する。
- まず、間接費を固定費および変動費に分類して、過去におけるそれぞれの原価要素の実績をは握する。この場合、間接費を固定費と変動費とに分類するためには、間接費要素に関する各費目を調査し、費目によって固定費又は変動費のいずれかに分類する。準固定費又は準変動費は、実際値の変化の調査に基づき、これを固定費又は変動費とみなして、そのいずれかに帰属させるか、もしくはその固定費部分および変動費率を測定し、これを固定費と変動費とに分解する。
- 次に、将来における物価の変動予想を考慮して、これに修正を加える。
- さらに固定費は、設備計画その他固定費に影響する計画の変更等を考慮し、変動費は、製造条件の変更等変動費に影響する条件の変化を考慮して、これを修正する。
- 変動費は、予定操業度に応ずるように、これを算定する。
- 予定配賦率の計算の基礎となる予定操業度は、原則として、一年又は一会計期間において予期される操業度であり、それは、技術的に達成可能な最大操業度ではなく、この期間における生産ならびに販売事情を考慮して定めた操業度である。 操業度は、原則として直接作業時間、機械運転時間、生産数量等間接費の発生と関連ある適当な物量基準によって、これを表示する。 操業度は、原則としてこれを各部門に区分して測定表示する。
- 部門間接費の各指図書への配賦額は、各製造部門又はこれを細分した各小工程又は各作業単位別に、次のいずれかによって計算する。
- 間接費予定配賦率に、各指図書に関する実際の配賦基準を乗じて計算する。
- 固定間接費予定配賦率および変動間接費予定配賦率に、それぞれ各指図書に関する実際の配賦基準を乗じて計算する。
- 一部の補助部門費を製造部門に配賦しないで、直接に指図書に配賦する場合には、そのおのおのにつき適当な基準を定めてこれを配賦する。
基準の解説
本記事では割愛します(2020/10/02時点)
一問一答
それでは、製造間接費の配賦に関する一問一答にチャレンジしましょう!
基準本文
個別原価計算において、労働が機械作業と密接に結合して総合的な作業となり、そのため製品に賦課すべき直接労務費と製造間接費とを分離することが困難な場合その他必要ある場合には、加工費について部門別計算を行ない、部門加工費を各指図書に配賦することができる。部門加工費の指図書への配賦は、原則として予定配賦率による。予定加工費配賦率の計算は、予定間接費配賦率の計算に準ずる。
基準の解説
本記事では割愛します。
基準本文
個別原価計算において、仕損が発生する場合には、原則として次の手続により仕損費を計算する。
- 仕損が補修によって回復でき、補修のために補修指図書を発行する場合には、補修指図書に集計された製造原価を仕損費とする。
- 仕損が補修によって回復できず、代品を製作するために新たに製造指図書を発行する場合において
- 旧製造指図書の全部が仕損となったときは、旧製造指図書に集計された製造原価を仕損費とする。
- 旧製造指図書の一部が仕損となったときは、新製造指図書に集計された製造原価を仕損費とする。
- 仕損の補修又は代品の製作のために別個の指図書を発行しない場合には、仕損の補修等に要する製造原価を見積ってこれを仕損費とする。
前記(二)又は(三)の場合において、仕損品が売却価値又は利用価値を有する場合には、その見積額を控除した額を仕損費とする。 軽微な仕損については、仕損費を計上しないで、単に仕損品の見積売却価額又は見積利用価額を、当該製造指図書に集計された製造原価から控除するにとどめることができる。 仕損費の処理は、次の方法のいずれかによる。
- 仕損費の実際発生額又は見積額を、当該指図書に賦課する。
- 仕損費を間接費とし、これを仕損の発生部門に賦課する。この場合、間接費の予定配賦率の計算において、当該製造部門の予定間接費額中に、仕損費の予定額を算入する。
本記事では割愛します。
個別原価計算において、作業くずは、これを総合原価計算の場合に準じて評価し、その発生部門の部門費から控除する。ただし、必要ある場合には、これを当該製造指図書の直接材料費又は製造原価から控除することができる。
作業くずに関しては説明を割愛します。
販管費および一般管理費の計算
販管費および一般管理費の分類基準
基準本文
- 形態別分類 販売費および一般管理費の要素は、この分類基準によって、たとえば、給料、賃金、消耗品費、減価償却費、賃借料、保険料、修繕料、電力料、租税公課、運賃、保管料、旅費交通費、通信費、広告料等にこれを分類する。
- 機能別分類 販売費および一般管理費の要素は、この分類基準によって、たとえば、広告宣伝費、出荷運送費、倉庫費、掛売集金費、販売調査費、販売事務費、企画費、技術研究費、経理費、重役室費等にこれを分類する。 この分類にさいしては、当該機能について発生したことが直接的に認識される要素を、は握して集計する。たとえば広告宣伝費には、広告宣伝係員の給料、賞与手当、見本費、広告設備減価償却費、新聞雑誌広告料、その他の広告料、通信費等が集計される。
- 直接費と間接費 販売費および一般管理費の要素は、販売品種等の区別に関連して、これを直接費と間接費とに分類する。
- 固定費と変動費
- 管理可能費と管理不能費
基準の解説
割愛します。
販管費および一般管理費の計算
技術研究費
新製品又は新技術の開拓等の費用であって企業全般に関するものは、必要ある場合には、販売費および一般管理費と区別し別個の項目として記載することができる。
一問一答
それでは、実際原価計算に関連するその他の一問一答にチャレンジしましょう!
基準本文
基準の解説
第3章 標準原価の算定

標準原価計算の目的
基準本文
標準原価算定の目的としては、おおむね次のものをあげることができる。
- 原価管理を効果的にするための原価の標準として標準原価を設定する。これは標準原価を設定する最も重要な目的である。
- 標準原価は、真実の原価として仕掛品、製品等のたな卸資産価額および売上原価の算定の基礎となる。
- 標準原価は、予算とくに見積財務諸表の作成に、信頼しうる基礎を提供する。
- 標準原価は、これを勘定組織の中に組み入れることによって、記帳を簡略化し、じん速化する。
基準の解説
基準は標準原価の目的として、次の4つを挙げています。
- 原価管理
- 財務諸表作成
- 予算管理
- 記帳の迅速化
さてこのような目的をもって実施される標準原価計算および標準原価管理ですが、そのそれぞれの構成要素を見ていくまえに、その全体像を改めて俯瞰してみましょう。

標準原価管理のプロセスは上図の通りです。ここで特に重要なのは次の要素といえるでしょう。
- 標準原価の設定
- 実際と標準の差異分析
- 経営活動への是正措置の実施
まずは①に該当する標準原価の算定から見ていきましょう。
基準の解説
標準原価の算定
基準本文
標準原価は、直接材料費、直接労務費等の直接費および製造間接費について、さらに製品原価について算定する。 原価要素の標準は、原則として物量標準と価格標準との両面を考慮して算定する。
標準直接材料費
- 標準直接材料費は、直接材料の種類ごとに、製品単位当たりの標準消費量と標準価格とを定め、両者を乗じて算定する。
- 標準消費量については、製品の生産に必要な各種素材、部品等の種類、品質、加工の方法および順序等を定め、科学的、統計的調査により製品単位当たりの各種材料の標準消費量を定める。標準消費量は、通常生ずると認められる程度の減損、仕損等の消費余裕を含む。
- 標準価格は、予定価格又は正常価格とする。
標準直接労務費
- 標準直接労務費は、直接作業の区分ごとに、製品単位当たりの直接作業の標準時間と標準賃率とを定め、両者を乗じて算定する。
- 標準直接作業時間については、製品の生産に必要な作業の種類別、使用機械工具、作業の方法および順序、各作業に従事する労働の等級等を定め、作業研究、時間研究その他経営の実情に応ずる科学的、統計的調査により製品単位当たりの各区分作業の標準時間を定める。標準時間は、通常生ずると認められる程度の疲労、身体的必要、手待等の時間的余裕を含む。
- 標準賃率は、予定賃率又は正常賃率とする。
製造間接費の標準
製造間接費の標準は、これを部門別(又はこれを細分した作業単位別、以下これを「部門」という。)に算定する。部門別製造間接費の標準とは、一定期間において各部門に発生すべき製造間接費の予定額をいい、これを部門間接費予算として算定する。その算定方法は、第二章第四節三三の(四)に定める実際原価の計算における部門別計算の手続に準ずる。部門間接費予算は、固定予算又は変動予算として設定する。
- 固定予算
製造間接費予算を、予算期間において予期される一定の操業度に基づいて算定する場合に、これを固定予算となづける。各部門別の固定予算は、一定の限度内において原価管理に役立つのみでなく、製品に対する標準間接費配賦率の算定の基礎となる。 - 変動予算
製造間接費の管理をさらに有効にするために、変動予算を設定する。変動予算とは、製造間接費予算を、予算期間に予期される範囲内における種々の操業度に対応して算定した予算をいい、実際間接費額を当該操業度の予算と比較して、部門の業績を管理することを可能にする。
変動予算の算定は、実査法、公式法等による。- 実査法による場合には、一定の基準となる操業度(以下これを「基準操業度」という。)を中心として、予期される範囲内の種々の操業度を、一定間隔に設け、各操業度に応ずる複数の製造間接費予算をあらかじめ算定列記する。この場合、各操業度に応ずる間接費予算額は、個々の間接費項目につき、各操業度における額を個別的に実査して算定する。この変動予算における基準操業度は、固定予算算定の基礎となる操業度である。
- 公式法による場合には、製造間接費要素を第二章第四節三三の(四)に定める方法により固定費と変動費とに分け、固定費は、操業度の増減にかかわりなく一定とし、変動費は、操業度の増減との関連における各変動費要素又は変動費要素群の変動費率をあらかじめ測定しておき、これにそのつどの関係操業度を乗じて算定する。
標準製品原価
標準製品原価は、製品の一定単位につき標準直接材料費、標準直接労務費等を集計し、これに標準間接費配賦率に基づいて算定した標準間接費配賦額を加えて算定する。標準間接費配賦率は固定予算算定の基礎となる操業度ならびにこの操業度における標準間接費を基礎として算定する。
標準原価計算において加工費の配賦計算を行なう場合には、部門加工費の標準を定める。その算定は、製造間接費の標準の算定に準ずる。

基準の解説
標準原価の改訂
基準本文
標準原価は、原価管理のためにも、予算編成のためにも、また、たな卸資産価額および売上原価算定のためにも、現状に即した標準でなければならないから、常にその適否を吟味し、機械設備、生産方式等生産の基本条件ならびに材料価格、賃率等に重大な変化が生じた場合には、現状に即するようにこれを改訂する。
この基準では、経営状況に変化があったときなどは標準原価を改訂しましょうね、というお話をしています。
基準の解説
標準原価の指示
基準本文
標準原価は、一定の文書に表示されて原価発生について責任をもつ各部署に指示されるとともに、この種の文書は、標準原価会計機構における補助記録となる。標準原価を指示する文書の種類、記載事項および様式は、経営の特質によって適当に定めるべきであるが、たとえば次のようである。
- 標準製品原価表
標準製品原価表とは、製造指図書に指定された製品の一定単位当たりの標準原価を構成する各種直接材料費の標準、作業種類別の直接労務費の標準および部門別製造間接費配賦額の標準を数量的および金額的に表示指定する文書をいい、必要に応じ材料明細表、標準作業表等を付属させる。 - 材料明細表
材料明細表とは、製品の一定単位の生産に必要な直接材料の種類、品質、その標準消費数量等を表示指定する文書をいう。 - 標準作業表
標準作業表とは、製品の一定単位の生産に必要な区分作業の種類、作業部門、使用機械工具、作業の内容、労働等級、各区分作業の標準時間等を表示指定する文章をいう。 - 製造間接費予算表
製造間接費予算表は、製造間接費予算を費目別に表示指定した費目別予算表と、これをさらに部門別に表示指定した部門別予算表とに分けられ、それぞれ予算期間の総額および各月別予算額を記載する。部門別予算表において、必要ある場合には、費目を変動費と固定費又は管理可能費と管理不能費とに区分表示する。
標準原価は様々な資料を通じて組織の部署・部門に伝達しましょうというお話です。実際には企業によって伝達の仕方は違うかと思います。
基準の解説
第4章 原価差異の算定・分析と会計処理

原価差異の算定および分析
基準本文
原価差異とは実際原価計算制度において、原価の一部を予定価格等をもって計算した場合における原価と実際発生額との間に生ずる差額、ならびに標準原価計算制度において、標準原価と実際発生額との間に生ずる差額(これを「標準差異」となづけることがある。)をいう。
原価差異が生ずる場合には、その大きさを算定記録し、これを分析する。その目的は、原価差異を財務会計上適正に処理して製品原価および損益を確定するとともに、その分析結果を各階層の経営管理者に提供することによって、原価の管理に資することにある。
基準の解説
原価差異には次の2種類があります。
- 予定原価 – 実際原価
- 標準原価 – 実際原価
原価差異を算定し、分析する目的は次の2つです。
- 財務諸表作成
- 原価管理

実際原価計算制度における原価差異
基準本文
実際原価計算制度において生ずる主要な原価差異は、おおむね次のように分けて算定する。
- 材料副費配賦差異
材料副費配賦差異とは、材料副費の一部又は全部を予定配賦率をもって材料の購入原価に算入することによって生ずる原価差異をいい、一期間におけるその材料副費の配賦額と実際額との差額として算定する。 - 材料受入価格差異
材料受入価格差異とは、材料の受入価格を予定価格等をもって計算することによって生ずる原価差異をいい、一期間におけるその材料の受入金額と実際受入金額との差額として算定する。 - 材料消費価格差異
材料消費価格差異とは、材料の消費価格を予定価格等をもって計算することによって生ずる原価差異をいい、一期間におけるその材料費額と実際発生額との差額として計算する。 - 賃率差異
賃率差異とは、労務費を予定賃率をもって計算することによって生ずる原価差異をいい、一期間におけるその労務費額と実際発生額との差額として算定する。 - 製造間接費配賦差異
製造間接費配賦差異とは、製造間接費を予定配賦率をもって製品に配賦することによって生ずる原価差異をいい、一期間におけるその製造間接費の配賦額と実際額との差額として算定する。 - 加工費配賦差異
加工費配賦差異とは、部門加工費を予定配賦率をもって製品に配賦することによって生ずる原価差異をいい、一期間におけるその加工費の配賦額と実際額との差額として算定する。 - 補助部門費配賦差異
補助部門費配賦差異とは、補助部門費を予定配賦率をもって製造部門に配賦することによって生ずる原価差異をいい、一期間におけるその補助部門費の配賦額と実際額との差額として算定する。 - 振替差異
振替差異とは、工程間に振り替えられる工程製品の価額を予定原価又は正常原価をもって計算することによって生ずる原価差異をいい、一期間におけるその工程製品の振替価額と実際額との差額として算定する。
基準の解説
標準原価計算制度における原価差額
基準本文
標準原価計算制度において生ずる主要な原価差異は、材料受入価額、直接材料費、直接労務費および製造間接費のおのおのにつき、おおむね次のように算定分析する。
- 材料受入価格差異
材料受入価格差異とは、材料の受入価格を標準価格をもって計算することによって生ずる原価差異をいい、標準受入価格と実際受入価格との差異に、実際受入数量を乗じて算定する。 - 直接材料費差異
直接材料費差異とは、標準原価による直接材料費と直接材料費の実際発生額との差額をいい、これを材料種類別に価格差異と数量差異とに分析する。- 価格差異とは、材料の標準消費価格と実際消費価格との差異に基づく直接材料費差異をいい、直接材料の標準消費価格と実際消費価格との差異に、実際消費数量を乗じて算定する。
- 数量差異とは、材料の標準消費数量と実際消費数量との差異に基づく直接材料費差異をいい、直接材料の標準消費数量と実際消費数量との差異に、標準消費価格を乗じて算定する。
- 直接労務費差異
直接労務費差異とは、標準原価による直接労務費と直接労務費の実際発生額との差額をいい、これを部門別又は作業種類別に賃率差異と作業時間差異とに分析する。- 賃率差異とは、標準賃率と実際賃率との差異に基づく直接労務費差異をいい、標準賃率と実際賃率との差異に、実際作業時間を乗じて算定する。
- 作業時間差異とは、標準作業時間と実際作業時間との差額に基づく直接労務費差異をいい、標準作業時間と実際作業時間との差異に、標準賃率を乗じて算定する。
- 製造間接費差異とは、製造間接費の標準額と実際発生額との差額をいい、原則として一定期間における部門間接費差異として算定して、これを能率差異、操業度差異等に適当に分析する。
基準の解説

原価差異の会計処理
基準本文
実際原価計算制度における原価差異の処理は、次の方法による。
- 原価差異は、材料受入価格差異を除き、原則として当年度の売上原価に賦課する。
- 材料受入価格差異は、当年度の材料の払出高と期末在高に配賦する。この場合、材料の期末在高については、材料の適当な種類群別に配賦する。
- 予定価格等が不適当なため、比較的多額の原価差異が生ずる場合、直接材料費、直接労務費、直接経費および製造間接費に関する原価差異の処理は、次の方法による。
- 個別原価計算の場合
次の方法のいずれかによる。- 当年度の売上原価と期末におけるたな卸資産に指図書別に配賦する。
- 当年度の売上原価と期末におけるたな卸資産に科目別に配賦する。
- 総合原価計算の場合
当年度の売上原価と期末におけるたな卸資産に科目別に配賦する。
- 個別原価計算の場合
標準原価計算制度における原価差異の処理は、次の方法による。
- 数量差異、作業時間差異、能率差異等であって異常な状態に基づくと認められるものは、これを非原価項目として処理する。
- 前記1の場合を除き、原価差異はすべて実際原価計算制度における処理の方法に準じて処理する。
基準の解説
フローチャートっぽいもので説明する
一問一答
最後に標準原価計算に関する一問一答にチャレンジしましょう!
ご協力をお願いいたします
この記事の筆者は管理会計・MCS研究を志しています。つきましては、「管理会計学習の成功要因調査」と題したアンケート調査にご協力をお願いできないでしょうか。下記ボタンよりGoogle フォームに飛びますので、そちらでご回答いただけますと幸いです。回答に要する時間は5~10分程度かと思われます。
ご協力いただき誠にありがとうございます。
最後に
管理会計・原価計算論は苦手にしてしまう会計士受験生が多いです。だからこそ、一度得意にした後は大きな武器になります。
また本記事では作成の都合上、割愛している部分が多々あります。今後も当記事をアップデートし、割愛している箇所についても埋めていく所存です。
また本記事に関して、ご質問やご意見などありましたら、お気軽にTwitter ID: @OrgThink までご連絡いただけますと幸いです。
本記事がみなさまの今後の健闘に、微力ながらもお手伝いできることを祈って本記事を終えたいと思います。